芸術的経営者を追求する、江幡公認会計士税理士事務所の心のブログ

UTM

 「UTM」とは「Under Table Money 」の略である。昨年10月、シンガポール公認会計士協会の方とベトナムに関する話をしている際に、彼が教えてくれた言葉である。「ATM」(=Automated Teller Machine)をベースに、その状況を揶揄した言葉であろう。ちなみに、シンガポールでは「UTMは一切ない」とのことである。
 私は国全体がそうではないと信じたいし、そうあっては将来の成長が望めないと真剣に考えているが、ベトナムでは、UTMが散見される。UTMがいけない事は皆承知していると思うが、UTMがあるのが現実なので、ベトナムでビジネスをやっていく上で避けて通れない問題でもある。無論、UTMをどうするかというのは経営判断であり、目に余るUTMを要求された場合等には、当局と闘うという経営判断もあると思う。
 それでは、UTMの会計処理・税務処理はどうあるべきであろうか。ビジネスの現実、UTMの管理、適正な期間損益計算、公平な課税の観点から問題となる。この点、UTMを支払うことを前提とするならば、以下の順序(あるべき順)で考えるべきであろう。
 
①会計上は、「その他経費」等の勘定科目で、「警察署に対する支払い」「税務署に対する支払い」等の事実を示す内容を明記して費用処理する。税務上は否認する。「正直」な処理である。
②会計上は、現地法人日本人マネジメントの給料に含め、当該日本人マネジメントに対する給料として処理する。税務リスクはあるものの、税務上も同様の処理をする。ただし、UTMが当該日本人マネジメントの課税所得となるので、個人所得税がその分増えることになる。
③会計上は、実際は現地法人日本人マネジメントが私的に支出した飲食代等について、公式インボイスを当該会社名で取得し、UTMを交際費としてカモフラージュして費用計上する。税務リスクはあるものの、税務上も同様の処理をする。この場合、会計上・税務上ともに交際費が実態を示さない金額となり、適正な期間損益計算・公平な課税の観点から問題がある。また、管理上、会計帳簿から離れた別管理が必要となる。
④何らかの方法で裏金をプールし、当該プールした金で処理する。会計上も税務上もオフ・バランス処理となるので、非常に好ましくない。また、管理上、会計帳簿から離れた別管理が必要となる。
 私は、公認会計士として、①をお勧めする。それか、せいぜい②か。いずれにせよ、UTMの取扱い・会計処理・税務処理は経営判断であるので、経営者の誠実性が問われることになる。

EBJ

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